恐竜が食べたかもしれない樹木がやってくる―。オーストラリアで一九九四年八月に見つかった世界最古と言われる樹木「ウォレマイパイン」(学名ウォレミアノビリス)が「花みどり未来館」(屋内)と「百華園」(屋外)の二カ所に展示される。
ウォレマイパインはナンヨウスギ科の樹木で、オーストラリア以外で公開されるのは世界初。恐竜が繁栄したジュラ紀から生きているとみられていることから、愛称は「ジュラシックツリー」と名付けられている。
ジュラ紀に発達した植物であるシダやソテツに似ていて、葉は大きくて細長いのが特徴。
花博会場にやってくる木は、同国クイーンズランド州政府から静岡国際園芸博覧会協会に寄贈される、発見樹木の枝から育てた樹齢約五年の木。挿し木により育てた木で若木ではあるものの、太古へのロマンをかき立ててくれそうだ。
浜名湖花博で本邦初公開される植物の一つが、南米ペルー原産の「カムカム」。その果実は地上のどの植物よりもビタミンCを豊富に含む。美容や健康に良いことで最近、名前が広まり始めたカムカムだが、本県と密接な関係にあることは意外と知られていない。
もともとはアマゾンの川辺に自生していたフトモモ科の樹木。それを農産物として定着させるためにペルーで指導に当たっているのが、磐田市出身の農業技術者鈴木孝幸さん(43)なのだ。
花博でカムカムを展示するパビリオン「ハーブの館 花夢香夢」の運営委代表幹事、宮野弘司さん(51)=浜松市呉松町、グリーンファーム代表=は、鈴木さんの取り組みに賛同した一人。ペルー政府の特別許可を得て、苗木を輸入した。
「鈴木さんの大きな志を来場者の皆さんに知ってほしい。カムカムはみんなの夢が詰まった植物なんです」と宮野さんは話している。
園芸の最新トピックスを集めた温室パビリオン「花みどり未来館」。最先端の育種・生産技術や、壁面緑化などの都市緑化技術を約三千平方メートルの室内に集積、披露する。中でも目玉は、世界の育種技術者が追い求める青色バラの特別展示コーナーだ。
バラは古くから人々に親しまれている園芸花の一つ。原種は百種類以上あるといわれ、このうち七、八種類を元に品種改良が行われてきた。たゆまぬ試行錯誤の連続で幾多の園芸品種が生み出された。ただ、英語の慣用句「a blue rose」が「ありえないこと」の意で使われるように、青色バラの開発は黒色と並び困難を極めている。
記録によれば、青色バラの開発は一八四〇年ごろには既に行われていた。しかし、もともとバラに青色の色素がなかったり、ごく微量な上、青色の発現システムがほかに比べて複雑なことなどが要因とみられる。
人工交配や遺伝子組み換えによる、純粋な青色バラの開発は、今なお世界中で続く。花博では、栃木県の育種家が開発し、今の段階で最も青色に近いと言われている「青竜」をはじめ「シャルルドゥゴール」などの実物を常時十数種類展示する。ただ、これら品種もまだ、紫や藤色の域を抜け切れてはいない。
江戸時代に高い園芸技術と美意識、教養を持った園芸家たちが生み出した植物を「伝統園芸植物」という。その植物八百品種や盆栽の名品約三百点を広く紹介するのが園芸文化館。来場者たちを江戸の時代にタイムスリップさせてくれる注目の施設だ。
館内(延べ床面積二千八百平方メートル)は計四室からなる。第一室は日本人の花意識の始まりから江戸園芸の特徴などをパネルで紹介。東海一の名園ともうたわれた沼津市原の「帯笑園」のゆかりの品々も展示する。
第二室は万年青(おもと)や変化朝顔、桜草などの伝統園芸植物、第三室は盆栽を並べる。「より美しく、珍しく、変わったものを」と江戸期の園芸家が生み出した伝統園芸植物は、花の咲き方や葉の形の違いの楽しさとともに、江戸の粋を堪能できそう。植物と、江戸から明治期の貴重な鉢を置く床は「額縁を切り取った感動の空間」(鴻農美帆総括ディレクター)に演出する。
第四室は「まとめ」の部屋。江戸園芸の特徴などを紹介するハイビジョン映像を上映する。
榊原八朗「小不老草名寄七五三」、
神奈川県フラワーセンター大船植物園「桜草写真」
日本おもと協会「四君子」
浜名湖周辺の十市町が共同出展するパビリオンが「浜名湖館 フルレ」。直径約十メートルの水面に、浜名湖の歴史や自然を映像で映し出す水鏡シアター、回廊型の展示は、十市町と浜名湖の魅力を花博会場から発信する拠点だ。
約三千平方メートルの敷地に一部二階建て延べ床面積約千七百平方メートル。最大の見どころのドーム型の外観を持った水鏡シアターは、円形の水面と周囲の壁面をスクリーンとし、浜名湖の生い立ちや四季の風景、周辺の年中行事などを複数の投影機で映し出す。水鏡を囲むように配する三百の座席が、劇場感覚を醸し出す。
十市町が独自に文化や産業を紹介する「浜名湖 緑の回廊」は体験工房も併せ持つ。屋外には中田島砂丘の風紋をモチーフにした庭園「遠州 風の庭」を整備する。
シャルルドゥゴール(京成バラ園芸提供)
宮野さんが手にする「カムカム」を中心としたペルーアマゾンのハーブ=浜松市呉松町のグリーンファーム
赤い実をつけた「カムカム」
ウォレマイパインの枝葉(JaimePlazaRoyalBotanicGardensSydney)
浜名湖花博会場は六千品種五百万株の草花のほかにも、見どころがいっぱい。海外からやって来る珍しい植物は今回の花博ならではの目玉展示となる。草花をとりまく歴史や文化を詳しく紹介するパビリオンも必見で、一日だけですべてを見るのは難しいほど、一つひとつが充実した展示となりそうだ。
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