最高の展示ともてなしでお客さんを迎えたい―。開幕まで3カ月余りに近づいた浜名湖花博に向け、準備に取り組んでいる人々がいる。希少な園芸品の育成をはじめ、花壇や庭園の造成とそこに植える苗作り。花に関連した手芸作品を製作したり、にぎわいを生み出すイベントに参加する人々もいる。さまざまな立場で花博を支える個人やグループを紹介する。


鮮やか2万株を出展


 「成長するたびに感動を覚える」とパンジーを栽培する持田さん=沼津市足高の農場

 浜名湖花博の百華園に展示されるパンジー六百品種のうち五百三十品種を、持田忠継さん(50)が栽培している。愛鷹山のすそ野に広がる沼津市足高のビニールハウスには、デルタ、ビオラ、ビビ、LRアリル、LRプロントなど数十色に及ぶ色とりどりのパンジーが並んでいる。

 出展する苗は約二万株。プロの職人といえども、これほど大量の花を一度に栽培することはあまりない。これまで扱った経験のない植物も含まれる。世界から注目される花博への出品だけに「失敗は許されない」と表情を引き締める。

 小学生のころから土いじりが好きだったという持田さん。それまでの野菜農家から「成長するたびに感動を覚える」という花の栽培に二十年前に転向した。「きれいな花を見るとうれしくなる」と花を楽しむ心は今も変わらない。

 栽培するパンジーが会場で花開くのは今年の春。「この花を見て、自分の身近なところも花できれいにしたいと思ってくれれば。世の中、もっと明るくなる気がします」と願いを込める。



認知度アップの好機
 静岡市清水秋吉町で園芸店「千寿園」を営む千葉和子さん(60)は、花博で伝統園芸植物の松葉蘭(まつばらん)、錦糸南天(きんしなんてん)などを国際花の交流館に出展する。千葉さんら園芸店経営者で組織する県伝統園芸組合(山本一喜会長)は全体で七部門約二百点を並べる。「なじみの薄くなった伝統園芸植物を広めたい」。千葉さんはまたとないチャンスに期待を寄せる。

 伝統園芸植物は色の変化やねじれなど、成長に連れて生じるさまざまな変異を「芸」と位置付けて楽しむ観賞用植物。江戸時代に大名が将軍に献上するなどして急速に世の中に広まった。文化的価値の高さから現在でも熱心な愛好家はいるが、若年層になるに従って認知度は低い。

 千葉さんは「伝統園芸は作り手の息吹をじかに感じられる文化」と魅力を語り、現在は出展する植物の栽培、管理に情熱を注ぐ。半年間開催される花博では植物それぞれの見ごろに合わせ、入れ替え作業を繰り返す。「何回来ても楽しめますよ」と、千葉さんの目が輝いた。


花博に出展予定の伝統園芸植物の手入れをする千葉さん=静岡市清水秋吉町
 


「激練り」を生き生き

 歌やダンスの練習に励む園児=浜松市入野町の入野保育園  

 浜松市入野町の入野保育園(中村くに子園長)の園児と卒園生でつくるグループ「H・D・K」が、浜名湖花博会場に特設される「のたねステージ」で歌やダンスを披露する。

 「浜松という地域に貢献したい」と話すのは演出を担当する鈴木ひとみ副園長。「花」と「浜松」をテーマに「浜松まつりの激練りを鳴子を使ったダンスで表現したい」と構想を語り、「子どもたちが生き生きと成長している姿を見てほしい」と力を込める。

 同園は平成九年度から異年齢児交流に取り組んでいる。小学生から高校生まで約二十人の卒園生とともに歌やダンス、ミュージカルなど年に四、五回ずつイベントで公演してきた。練習では卒園生が園児たちの指導に加わり、花博でも四、五歳児と一緒にステージに立つ。

 公演は八月と九月の二回を予定している。練習に取り組む八幡美紀ちゃん(4つ)は「踊ると元気が出る」と笑顔を見せ、山田康加ちゃん(4つ)は「ステージでお客さんに見てもらうのが楽しみ」と花博を待ちわびる。



学んだ造園技術 結集
 農業を学ぶ県内の高校生が、会場内のふれあいの庭の一角に「海の生き物」をテーマにした庭園を出展する。魚に見立てたカラフルな植栽や、海の生物をモデルにしたトピアリーを配置する。高校生ならではの柔軟な発想と、授業で培った生産・造園技術を凝縮した庭になりそうだ。

 参加するのはいずれも県立の下田南南伊豆分校、田方農、富岳館、静岡農、藤枝北、小笠、周智、磐田農、天竜林、農業経営、引佐の十一校。幅約七メートル、長さ約五十メートルの帯状スペースが、高校生のキャンバスだ。

 地元校として花博を迎える浜松市都田町の農業経営高は、平成十五年中に校内で花壇の試作をするなど、準備に力が入る。農業クラブの生徒を中心に約三十人が苗作りやトピアリーの設計に着手した。校内の花博実行委員長、橘賢君(16)=生産流通科二年=は「自分たちが描いた通りの庭を、会場に表現したい」と意気込みを語る。

 計画では、七月下旬から十月にかけて、会場の一角にカワハギを模した庭園を造成する。目下、最適な花材を探すため、クロトン、ベゴニアなどの栽培を進めている。

 生物生産科三年の河合大典君(18)は「目指すのは見て楽しい庭。僕らは卒業ですが、後輩たちが頑張ってくれるでしょう」と話している。



(上)地元開催の花博に向け意気が上がる県立農業経営高校の生徒=浜松市都田町の同校
(下)農業高生が出展する庭園の予想模型


植栽を通し交流の輪

 「庭を花でいっぱいにしたい」と、手入れをする新村さん=浜松市内  

 「花博が終わっても、浜松を花いっぱいの街にしたいです」。新村典子さん(64)は、植栽を通して浜松市民と一般来場者が交流を深めるパビリオン「集いの街」で、市民公募のボランテイア「花の街飾り隊」の一人として花博に参加する。

 もともと花が好きという新村さんは六年ほど前から、本格的に自宅の庭で趣味として園芸を始めた。園芸を始めたのがきっかけで地域の公園や沿道を花で飾るボランティアにも参加している。

 新村さんは、いつも花が咲いている庭にしたいと、所狭しと並べられた鉢や苗の状態を確認するのが日課。「花を見ていると生活に潤いが出て心豊かになれる。花が好きな人同士で肥料の情報や苗の交換をしたりして交流の輪が広がるのも楽しいです」と園芸の魅力を話す。

 会場では「新茶の季節」「夏祭り・夕涼み」をテーマに来場者と一緒に花飾りを楽しむ。「毎日、図鑑を眺めたり、花の手入れをしたりしながら、会場でどんな花を飾ろうか考えているところです」と花博が待ち遠しい日々を過ごしている。



江戸時代の庶民 再現
古典落語をイメージした庶民的な和紙人形を約二十年間、作り続けている田畑華扇さん(56)は、門下生五十三人とパビリオン「浜名湖館フルレ」で「凧(たこ)揚げ祭り」や昔話の「ダイダラボッチ」「象鳴き坂」など江戸時代の浜松を和紙人形で再現する。

 「来場者が、人形を見て当時の様子を想像できるものにしなければ」。田畑さんは、あえて人形の数を多くし、約百体の人形と細かい小道具でジオラマ風に表現する計画を立て、約一年前から製作に励んでいる。

 田畑さんは「人形に顔の表情がない分、手足の動きで当時の庶民らしさを表現したい」と、門下生に自ら演技をして見せたり、歴史書で当時の庶民感情をイメージしながら、人間の体の動きを追究する。  作品の完成は開幕直前の三月。「まだどんなものができるのか心配もありますが老若男女が楽しめる展示にしたい」と意気込んでいる。

「数多くの和紙人形で物語風に展開します」と話す田畑さん=浜松市三方原町  
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