県内トップを切って浜名湖花博のサテライトシティーの指定を受けた熱海市が、三月十八日―五月二十三日に開催する「熱海花の博覧会」は、花の街・ガーデンシティーへ変ぼうする熱海を全国に発信するイベントだ。メーン会場近くの海水浴場・熱海サンビーチでは、全国初という砂浜のライトアップも同時スタート。「花」と「光」で輝きの街を彩る。


 熱海花の博覧会の会場イメージ図
12星座の「庭」魅力

 メーン会場は、熱海の海と山を一望する熱海観光港施設用地(三・八ヘクタール)。花で彩られたゲートをくぐると、熱海特産の橙(だいだい)を使った「だいだい城」が来場者を迎える。鮮やかな色とともに、中世ヨーロッパの城を模したモニュメントは香りも楽しめる。

 続いて広がるのが、テーマガーデン「恋人たちの庭」。十二星座をモチーフにした十二のポケットパークだ。

 月の女神をイメージしたムーンガーデン「おとめ座」、風の庭「てんびん座」、砂漠の庭でオリオンを刺した大きなサソリを表現した「さそり座」、ハーブを中心とした心休まる癒やしの庭「いて座」―など星座やギリシャ神話をイメージしたさまざまな庭が、今の恋人たちやかつて恋人だった夫婦連れなどカップルをロマンチックな気分にさせる。

 十二星座の中心「アフロディーテの泉」では、愛と美の象徴であるビーナスが優しくほほ笑む。

 アジアを中心にした各国の壺を集めた「ワールドポットガーデン」も展開。イギリスや中国、イタリアなど世界の花々が咲き乱れる。

 海沿いのパレードストリートには、海の神話のモニュメントやストリートガーデンショップが並ぶ。通りでは、大人から子供までが楽しめる「だいだいパレード」が連日繰り広げられ、博覧会を盛り上げる。

 目の前の海では、ゴールデンウイークに水上スキーパフォーマンスショーも計画中だ。

 「フードコート」では世界の料理が来場者を迎え、「あたみ花華プラザ」では熱海芸妓の「華の舞」やプロアーティストのステージイベント、体験型のイベントなどが繰り広げられれる。

 会場テーマは「ガーデンシティ熱海の創世」。六十七日間、新たに花の香りを身にまとった、心癒やされる観光地熱海を全国に発信する。


光に包まれ夢見る童

 「熱海花の博覧会」にさらに魅力を添えるのが、“風の画家”として知られる熱海市在住の中島潔さんの作品展「童の夢は花のいろ」だ。博覧会の開催期間を通して出入り口ゲート近くのアートギャラリーで開催される。

 中島さんは美人画とともに郷愁を誘う童画でおなじみの画家。作品がNHK「みんなのうた」のイメージ画になったことで一躍、全国から注目を浴びた。展示作品は約八十点。四季折々に移ろう自然や草花と子供の共生を描いた新作、代表作を前後期に分けて展示する。

 また、中島さんは博覧会のためにおなじみの童をデザインしたキャラクター「あたみちゃん」=イラスト=も作成。花に埋もれて夢見る童で「花」や「光」「明るさ」「自然」「愛」「夢」を表現した。博覧会ではオリジナルグッズも販売の予定という。





 「熱海花の博覧会」はメーン会場の熱海港観光施設用地を花で飾るだけでなく、市内全域を花で飾ります。観光客が駅を降りたら、そこはもう博覧会の会場―そんな花の博覧会にしたいと思っています。

 この博覧会は、石川静岡県知事の唱える全県花博に呼応するもので、一翼を担うものです。「まちづくり、花づくり、ひとづくり」をテーマに進めています。

 これから熱海がさらに大きく飛躍していくためには、家族、個人、特に女性に愛される街へとイメージを変え、心癒やされる観光地へと大きく舵(かじ)を切っていかなければなりません。そのために熱海市は、二〇一〇年を目標に街中を花でいっぱいにする「ガーデンシティー熱海」の実現を目指しています。


 熱海サンビーチをロマンチックに浮かび上がらせるライトアップのイメージ図
 誰からも愛され心癒やされる観光地へイメージチェンジするための大きなステップが、この「熱海花の博覧会」です。

 併せて市民の皆さんに参加協力いただくことにより、市民主導のまちづくりを目指すことも重要な狙いです。

 花の博覧会と同時に始まる熱海サンビーチのライトアップを市民の皆さんと一緒に盛り上げ、花と光に包まれた熱海を広く全国に発信し、大誘客作戦を展開していきたいと考えています。必ず、いらした方々に喜んでいただける、花の博覧会になると思います。私自身も今から楽しみです。

 花が昼間の彩りなら、海辺の夜をロマンチックに演出するのが海水浴場・熱海サンビーチのライトアップだ。「熱海花の博覧会」の開幕と同時に、各種の照明が打ち寄せる波頭や歩道を照らし、“百万ドルの夜景”をいっそう輝かせる。

 全国初という砂浜の常設ライトアップは、東京タワーやベイブリッジのライトアップでもおなじみの世界的照明デザイナー・石井幹子さんがデザイン。海水浴場を単に明るく照らし出すのではなく、陰影や周辺景観とのマッチングを考えて各種照明を配置する。延長四百メートル、幅六十メートルのビーチではいま、照明設備の設置工事が進む。

 完成すれば七台の投光器が砂浜や波頭を照らし、腰高のボラード照明や樹木照明が砂浜沿いの歩道や立木を浮き立たせる。歩道に埋め込まれた「海ほたる照明」は幻想的な光を放ち、見る者を別世界へいざなう。

 砂浜ライトアップは実は、夜間景観の魅力アップを狙った同市のライトアップ構想の第一弾。市は豊かな情緒を残す糸川沿いや新たな文化・観光拠点として脚光を浴びる「起雲閣」周辺などへの拡大も計画している。


浜北市

 例年10月に行う「浜北万葉まつり」の曲水の宴。花博を記念して5月にイベントを行い、まつりも前倒して開く計画だ=15年10月11日、浜北市平口の万葉の森公園

期間中に万葉まつり

「浜名湖花博を契機に、みどりの街、そして万葉集ゆかりの地・浜北をこれまで以上に打ち出していければ」。浜北市企画調整課の大久保清・計画スタッフ長が描く浜名湖花博後の花と緑のまちづくりのデザインだ。サテライトシティーの一つ浜北市では現在、万葉の森公園(同市平口)やJAとぴあ浜松緑花木センター(同市新原)で、花博に向けた施設整備が急ピッチで進んでいる。

●公園に花園整備

 一・八ヘクタールの面積に三百種、六千五百本の万葉植物を配した万葉の森公園は敷地を新たに四千八百平方メートル拡張。大型バス五台と乗用車四十六台を収容できる駐車場を西側に整備し、物販・テイクアウトゾーン、多目的広場、万葉にちなむ花園・育苗ゾーンを設ける計画だ。

 「現状の施設ではなかなか、リピーターを確保できなかった。物販施設の整備で、家族連れが楽しめる施設にしたい」と話すのは市教委生涯学習課の渡辺義文課長。例年十月中旬に開催する「万葉まつり」を花博期間中に前倒しする予定で、まつりでみやび豊かに繰り広げる「曲水の宴」を中心とした行事を五月にも開く。

●農産物も販売


 花博を契機にリニューアルし、植木や花の販売に力を入れるJAとぴあ浜松緑花木センター=浜北市新原
 JAとぴあ浜松緑花木センターでも三月上旬を目指してリニューアルを進めている。事業費は約一億円。農協管内の農産物を販売する「ファーマーズマーケット」を新設し、「花博にみえたお客さんに、植木や花、農産物をお土産として買っていただく」(渥美良安センター長)ことを目標に据える。植木会館や回遊式の日本庭園「百景園」を整備した平成九年以来の本格的な改修だ。

 年間約九十万人が訪れる県立森林公園もサテライト会場の一つ。県は、花博開幕に合わせて三月下旬、ビジターセンター「バードピア浜北」をオープンさせる。ハイビジョン映像などを使いながら森の一日を模擬体験できる体験展示ゾーンや、季節ごとに森林公園を紹介する情報ゾーンを整え、自然学習・体験を楽しめる拠点施設を目指す。

 サテライト会場三カ所はいずれも、入場無料。三会場を紹介するパンフレットも作成予定で、市は誘客を図るホームページの開設やイベントの連携を図るために担当者による会議を発足させる。

引佐町

4千株のツツジ圧巻


 渋川つつじ公園は5月中旬ごろから一帯が赤紫に染まる=引佐町渋川(町役場提供)
 町村では唯一花博サテライトシティーに認定されている引佐郡引佐町は、町が総合計画で「緑と花のまちづくり」を掲げるほか、約五百五十人の町民が参加する花の会の活動も盛ん。昨年十一月には町や花の会などの関係団体が参加し、観光客受け入れの方策を検討する「サテライトシティ運営協議会」も発足したばかりで、「花博で生まれる観光需要を一過性で終わらせるのではなく、リピーターを生みだす取り組みをしたい」(長山芳正町長)と、町内の機運も徐々に高まっている。

●方広寺で大開帳

 同町が認定を受けたのは昨年七月。認定へ向けた動きが民間から積極的に広がったのが特徴で、大きな原動力となったのが町内五カ所のサテライト会場だ。目と鼻の先で行われる花博を、「観光客獲得の大チャンス」(小野寺秀和竜ケ岩洞所長代理)ととらえた。各会場とも花博期間向けに、それぞれ趣向を凝らしたイベントを練っている。

 同町内でも有数の観光地奥山地区には三つのサテライト会場が固まる。臨済宗方広寺派の大本山方広寺は花博開幕の四月八日から鎮守様として名高い「半僧坊大権現」の特別大開帳を行う。「県西部で行われるビッグイベントの盛り上げに一役買えれば」と同寺。大開帳は平成八年以来で十月三十一日まで約三十万人の参拝が見込まれる。同地区内の観光レジャー施設・奥山高原は、春の桜や秋の山野草など、四季を通じさまざまな草花が楽しめることで人気。観光鍾乳洞・竜ケ岩洞では、花博会場を望むことができる竜ケ岩山ふれあいハイキングを五月と九月の二回実施する。

 町の南にある龍潭寺と、最北端の渋川地区にある渋川つつじ公園の一番の見ごろは五月。龍潭寺では国の名勝指定を受ける小堀遠州作の庭園にサツキが咲き誇る。渋川つつじ公園では、県の天然記念物に指定される渋川ツツジが満開を迎え、約五十アールの公園が四千株以上のツツジによって鮮やかな赤紫に包まれる景色は圧巻だ。

●沿道花壇も歓迎

 工夫を凝らしながら沿道花壇の整備を行う花の会の会員=引佐町川名
 これらのサテライト会場も参加するサテライトシティ運営協議会では、誘客看板やのぼり旗を町内外に設置して、「花の町引佐」を広くPRすることを目指す。また、町内の幹線道路沿いなど、約五十カ所の沿道花壇は自治会や花の会がそれぞれ工夫を凝らした花壇を作って来町者を迎える予定。花の会の岩音昭夫会長(71)は「車窓からの風景にも注目してほしい」と、呼び掛けている。